スーパーで売っている「まぐろ」と、高級寿司店のマグロは実は種類が違います。また、市場でプロはどうやって良いマグロを見極めているのでしょうか。この記事では、知っておくと寿司がもっと楽しくなるマグロの種類の違いと、プロの目利き術を、鮨職人・五十嵐健吾が解説します。
監修者プロフィール
五十嵐健吾
フレンチ・イタリアンの分野で10年以上のキャリアを積んだのち、和食の世界へ転向。西洋料理で培った技術と美意識を土台に、鮨職人の道へ進む。麻布十番の名店「みつい」の三井氏に師事し、素材の扱い・仕込み・握りの一つひとつを磨く。現在は、かきだ鮨グループにてメニュー開発と顧客満足の責任者を務める。

スーパーのマグロと寿司屋のマグロは、種類が違う
「スーパーで売っている『まぐろ』と、お寿司屋さんのマグロって同じものですか?」という質問をよく受けます。答えはノーで、多くの場合、種類が異なります。
マグロにはいくつかの種類があり、それぞれ大きさ・脂の乗り・味わいが大きく異なります。
マグロの種類と特徴
本マグロ(クロマグロ)――高級寿司店が使うマグロの最高峰
本マグロ(学名:クロマグロ)は、全長最大3メートル・体重700キロを超えることもある、マグロ類の中で最大の種です。大トロ・中トロ・赤身すべての部位が揃い、脂の乗りときめ細かいサシは他の種とは別格。高級寿司店や専門店で使われるのが、この本マグロです。
価格は高いですが、その分味わいの深さと複雑さは群を抜いています。大間・塩釜・戸井など、産地によっても個性が異なります(産地の違いについては記事2で詳しく解説しています)。
メバチマグロ――回転寿司・中級店でよく使われるバランス型
全長約2メートルで、大きな目が名前の由来のメバチマグロ。赤身の色が鮮やかでバランスの良い味わいがあり、回転寿司や中級寿司店でよく使われます。本マグロに比べると脂の乗りはやや控えめですが、それはそれでおいしいですよ。年間を通じて安定供給されるため、使い勝手の良い種類です。
キハダマグロ――さっぱり系。料理向きで、ツナ缶の原料にも
黄色いヒレが特徴の、熱帯・亜熱帯系のマグロです。脂が少なくさっぱりしているので、刺身よりもステーキ・カルパッチョ・マリネなど料理向き。シーチキン(ツナ缶)の原料として最もよく使われるのもこのキハダです。価格が手頃なのでコスパが良く、料理の素材として活躍します。
種類別まとめ
| 種類 | 大きさ(最大) | 脂の量 | 主な用途 | 価格帯 |
| 本マグロ(クロマグロ) | 全長3m・700kg超 | 非常に多い | 高級寿司・専門店 | 高い |
| メバチマグロ | 全長約2m | 中程度 | 回転寿司・中級店 | 中程度 |
| キハダマグロ | 全長約2m | 少ない | 料理用・ツナ缶 | 手頃 |
プロはどうやって市場で本マグロの良し悪しを見極めるのか
市場でのマグロの目利きは、鮮魚の中でも特に難しいとされています。五十嵐も「プロでもよく失敗する」と認める世界です。それでも、プロが必ずチェックするポイントがあります。
チェックポイント:「尾切(おきり)」の断面を見る
最も重要なポイントが、尾切(尾に近い部分を切り落とした断面)の確認です。

断面で見るべきは主に2点です。
「身と皮の間の脂の層」
身と皮の間に白い脂の層が厚くあるものは、腹身(トロ)の脂も期待できます。この脂の帯が太いほど、全体的に脂が乗った個体である可能性が高くなります。
「チヂミ」があるか
切った断面の身が縮れて盛り上がっている状態を「チヂミがある」と言います。これは鮮度が抜群に良い証拠です。逆に断面が平らにだれているものは鮮度が落ちている可能性があります。
目利きは難しい。それがマグロの世界
ただし、五十嵐は正直にこう言います。
「本マグロの目利きは本当に難しくて、プロでもよく失敗します。捌いて中を見るまでは、良いマグロかどうかの見極めはなかなかできないですね」
外側からわかる情報には限界があり、だからこそマグロの仕入れはプロでも経験と勘が問われる世界です。消費者の立場から言えば、「信頼できる職人・お店を選ぶ」こと自体が、最良の目利きとも言えます。
まとめ
- スーパーのマグロは多くの場合メバチマグロかキハダマグロ。高級寿司店が使うのは本マグロ(クロマグロ)。
- 本マグロは大きさ・脂の質・きめ細かさが他の種と別格。大トロ・中トロ・赤身すべての部位が揃う唯一の種。
- メバチは安定供給・バランスの良さで回転寿司や中級店向き。キハダはさっぱり系で料理向き・ツナ缶原料。
- プロの目利きは「尾切の断面」で脂の層の厚さとチヂミの有無を確認することが基本。
- ただし本マグロの目利きはプロでも難しく、捌くまでわからないことも多い。
